物書きは恥かき

始めより 終わりむつかし ひとの道・・・窓際の凡才ですが おもいきり 生きてます

小樽の庭の牡丹

今年も牡丹の大輪が咲き始めた。
真っ先に咲くのは、いわゆる牡丹色の牡丹だ。
少し遅れて、薄ピンク、白、黄など4色ほどが庭のあちこちに咲く。

30年近く前に、小樽在住の宮川魏画伯が「のと先生の家の庭の牡丹を描かせて欲しい」とふらりと訪ねていらして、庭で道具を広げ、太陽の下あふれんばかりに咲き誇っている様子をカンバスに描いていったと母から聞いたことがあった。
油絵が趣味だった母にとって、宮川画伯は3人目に師事した先生だった。
学校が休みのとてもよい天気の日曜日で、父も家に居て、居間で粗末なお昼をお出ししたとのことだった。
それからほどなく宮川画伯は他界された。
母は「まあなあ、、、長く胸を患ってらしたからなあ」と、仕方なげに惜しんでいた。

その後、母が購入して部屋に飾ってある数点の作品や市内でふと見かける作品をみるにつけ、ぼんやりと思い出す程度だったのだが、3年ほど前、宮川先生の奥様から電話をいただいた。
父は他界し、母はすでにホームに居たので、私が応対した。
「夫の遺作を整理していたところ、のと先生のお庭の牡丹を描いたものが出てきたので、ぜひ受け取ってほしい」とのことだった。
母と相談して、数日後に連れだってお宅に伺った。
私は初めて見たのだが、自宅に繋がるアトリエは昔と変わっていない、懐かしいと母がもらした。
「額に入れていませんけれど」と出された絵は、牡丹色が見事だった。

庭の牡丹はかわらず見事に咲きほこっている。
当時と同じように太陽もさんさんと降り注いでいる。
だけど 筆をもつ画伯は居ない。
父も居ない。

草むしりの後、少しだけつんで、札幌の家の食卓に飾った。

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